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こんにちは、絵本作家・イラストレーターのHaijiです。
私はイラストの仕事を6年間したあと、3年前に絵本のご依頼を初めていただき、ただいま5冊目&6冊目の絵本を制作しています。
絵本自体は昔から好きで、大学生の頃からお気に入りを買い集めてきました。
せっかくなのでこのブログで少しずつ、手持ちの絵本や新しく購入した絵本などを紹介していきたいと思います。
記念すべき第一回レポの絵本は「ジュリアンはマーメイド」。
こちらの絵本は先日、打ち合わせで、トランスジェンダーでオニイタレントのちくし春さんに教えていただき、感銘を受けたものです。
(以下ネタバレを含みます)
絵本「ジュリアンはマーメイド」の概要
分・絵:ジェシカ・ラブ
訳:横山 和江
出版:サウザンブックス
発行:2019年6月
日本での発売時期:2020年6月
ジェシカ・ラブさんはニューヨーク在住のイラストレーター・舞台俳優の方だそう。初めて描いたこちらの絵本でボローニャ・ラガッツィ賞(伊)、ストーン・ウォール賞大賞(米)などを受賞されているそうです。
ストーン・ウォール賞というのはLGBTQをテーマにしたものの中からすぐれた作品に贈られる賞です。
初めての絵本で賞を受賞されたり、国を超えて注目されたりしてすごい!(夢がありますね・・)
少し内容を説明しますと、ジュリアンというのは男の子の名前です。
おばあちゃんと一緒に行ったプールの帰りに、マーメイド(人魚)のようなきれいな格好をした女性たちに出会います。
ジュリアンはマーメイドが大好き。その女性たちをひとめ見るだけで夢見心地になり、マーメイドの空想を描きます。(この空想にふけるシーンの描き方・見せ方も素晴らしいんですよ)
ジュリアンは家に帰るなり、家の中の植物やカーテンなど身近なものを使ってマーメイドに変身します。
それを見たおばあちゃんの反応は・・?
というようなお話です。
絵本「ジュリアンはマーメイド」テーマはLGBTQ
この絵本はLGBTQをテーマにしており、ジェンダーにとらわれず自分の気持ちを表現することの大切さ、素晴らしさを描いています。
LGBTとは「Lesbian(レズビアン)」、「Gay(ゲイ)」、「Bisexual(バイセクシュアル)」、「Transgender(トランスジェンダー)」。
Qというのは「Queer(クィア)」または「Questioning(クエスチョニング)」の二つの言葉を表していて、セクシャルマイノリティの中でもLGBTの中に分けられない・分ける必要がない・決めたくないと考えている方がここに分類されるようです。
LGBTQについて
絵本「ジュリアンはマーメイド」の舞台はニューヨーク、マーメイドパレード
絵本に出てくるマーメイドパレードはニューヨークのコニーアイランドに実在するパレードのようです。
コロナの影響で2020年は開催されなかったのかもしれませんが、2019年の動画が見つかりました。
とってもきらびやかで華やかで、楽しそう!
ジュリアンでなくてもこれはワクワクしてしまいますね。
「ジュリアンはマーメイド」のここが素晴らしい
絵で語る、まさに絵本
私がこの絵本を見て一番強く感じたのは、ストーリーの見せ方が素晴らしいなということです。
この絵本は文章がとっても少ないのです。
文章がつけられていない場面や、ことばにできないジュリアンの気持ちをたくさんの絵で表現しています。
ジュリアンが電車の中でマーメイド姿の女性たちに出会ったあと、自分もマーメイドになれたら、、自分もマーメイドなんだ、、という空想にふけるわけですが、
それを言葉ではなくジュリアンの目の動き、顔の動き、体の動きをコマで描いて、まるで映像を見ているかのような気持ちにさせられます。
読み手の頭の中でジュリアンが動き出します。
少ない文章を絵の表現で補う(または絵だけで完結してしまう)というのは絵本の本来あるべき姿だろうと思います。
一枚の絵からそこに吹く風を感じるような気がする、一枚の写真からそこにいる人の笑い声が聞こえてくるような気がする、
絵本の1ページからジュリアンの気持ちのたかまりやドキドキが伝わってくる気がする、ジュリアンが動き出す気がする、
そういった作品や絵本を「良い作品」「良い絵本」と呼ぶのだろうなと改めて思いますね。
登場人物の表情が豊か
この絵本は登場人物のジュリアンの表情がとっても豊かです。
電車の中でマーメイド姿の女性たちを見つけた時のジュリアンのびっくり・うっとりした表情は、おばあちゃんでなくても、ジュリアンの気持ちを守ってあげたいという気持ちにさせます。
家にあるもので着飾ってマーメイドに扮してわくわくしている表情、それをおばあちゃんに見つかってしょんぼりしてしまう表情。
どの表情も読んでいる自分自身にも覚えがあり、見つかってしょんぼりしてしまうところなんかはこちらまで悲しみでいっぱいになってしまいます。
(そのあと、しょんぼりがひっくり返るような素敵な展開になるのですが)
クラフト紙と色使いから伝わる優しさ
この絵本は全体的に茶色いクラフト紙に描かれています。
ジュリアンの肌の色を綺麗に見せるためでは、とも言われています。
茶色がベースにあるのでその上にカラフルに広がる世界がとっても優しく目に入ってきます。ぜひ手にとって読んで欲しいのですが、色が、とっても綺麗です。
また、クラフト紙ですので触り心地もナチュラルで優しいです。
クラフト紙の絵本ってあんまり思い浮かびませんよね。独特の触感がとても心地良いです。
ジュリアンを受け入れるおばあちゃんがとにかく素敵
絵本の最初から最後まで出てくるジュリアンのおばあちゃん。
このおばあちゃんがとにかく素敵です。
少々(というかかなり、笑)無愛想なおばあちゃんですが、マーメイドの格好をしたいというジュリアンを全面的に受け入れます。
ジュリアンのマーメイド姿を見たあとにおばあちゃんがジュリアンにプレゼントしたものがあるのですが、
これがとっても素敵で、「わぁ〜」と声が出るほどでした。
おばあちゃんは無愛想ですが、絵本を見返すと、ほとんど全ての場面においておばあちゃんはジュリアンのほうを見守っていることがわかります。
この絵本はLGBTQをテーマにしているものですが、そうでなくても誰に対しても、自分の気持ちを表現することの大切さ、素晴らしさを伝えているという感想を持ちました。
私の感想、まとめ
- 絵本「ジュリアンはマーメイド」はLGBTQをテーマにした2019年の絵本
- 言葉を尽くすかわりに絵で読み手に想像させる表現方法がすごい
- 絵本の手触りや色使いがやさしくて心地よい
- おばあちゃんのジュリアンを受け入れる姿勢に気持ちがあたたかくなる
- この絵本は誰に対しても、自分の気持ちを表現することの大切さ、素晴らしさを伝えている
最後に英語版ではありますが、読み聞かせ動画があったので貼っておきます。
気になる方はぜひ実際の絵本を手にとってみてくださいね。